最近ビカクシダの胞子培養ケースが増えてきて置き場に困るように。
いろんな品種を育ててきましたが、成功もあれば未だに失敗することも多い胞子培養。
日本の環境で熱帯の植物を繁殖させるのは、ひと手間、一工夫が常に必要だと感じています。
初心者の頃は特に手探りで、光や温度の管理、湿度の管理がよくわからずいくつもの胞子をダメにしてきましたが、最近ではほとんど90%くらいの胞子が大きくなるような環境づくりがわかりました。
失敗する中で見つけた健康に大きく育てるコツを今回はお伝えできればと思います。
今回はビカクシダを胞子から育てる手順や、必要な道具、用意すべき環境について紹介していきます。
実際の写真や使っているアイテムなど、私の実体験と現在進行系で育成している様子をまとめていきますので、
- 成体は高くてなかなか手が…
- 時間がかかってもいいから安く手に入れたい
- どんな風に育っていくのか0から観察してみたい
など、胞子培養にチャレンジしてみたいという方の参考になりましたら幸いです。
ちなみにこのページでは「胞子体が出るまで」をまとめています。
ビカクシダ 実際の成長過程
まずビカクシダの胞子培養から鉢上げするまでに大まかに分けて3つの段階があります。
ワイドタイプのリドレイの場合で、この期間は目安で種類や胞子の保存状態によっても変わります。
種類や環境で前葉体の成長の早い、遅いがかなりバラバラですので参考程度に!
各段階ごとに管理方法がちょっと変わったりしますのでどう成長していくのか?を最初に知っておきましょう。
前葉体(約1〜2ヶ月)
胞子をまいて1〜2ヶ月で、うまくいくと苔のようにピートの苗床を覆い尽くす。
(こちらだけウィリンキー種の画像になります。)
ここまでくるとちょっと安心&嬉しい。
前葉体(約3〜4ヶ月)
小さな葉がもさもさと生えて立体になってくる。
水やりが必要になってきます。
定期的に水をあげて、適度に湿った状態をキープしてあげます。
胞子体(約6ヶ月)
葉っぱのような胞子体が出てきたら鉢上げまでもうひと頑張り。
問題なく成長していると実感できる嬉しい瞬間。
引き続き定期的に様子を見ながら水やりする時期。
ビカクシダ胞子培養の下準備!必要な道具と手順
↓まず「ビカクシダの胞子培養」を始める際に必要なものや準備する工程です。
ビカクシダの胞子の購入・入手方法
胞子培養にあたって胞子を入手しておく必要があります。
これは多くの場合「ネットでの購入」になると思います。
関東の都市圏ならビカクシダを専門に扱っているお店はそこそこありますが、それ以外ですとほとんど専門の実店舗ではありません。また、お店があっても胞子が売っていない場合もあります。
一方ネットだとメルカリやペイペイフリマなどで容易に手に入れることができ、種類も豊富です。
もちろん一般人が出品しているので保存状態によって、
- 前葉体が育たない
といったリスクも実際あります。
ただしそのようなリスクを鑑みても、人気種のリドレイの胞子でも500円〜1000円/gで買えたりするので、そこまで失敗を恐れる必要はないかなと思います。
最初から高級な品種でチャレンジするのは(富豪の方以外は。笑)あまりおすすめしません。
「近くに胞子をくれる知り合いがいる」という方、以外はネットでの購入が現実的なんじゃないかなと思います。
胞子って管理状態で出る・出ないが大きく変わってしまうんですよね。
なので個人的におすすめなのは、いろんな販売者から買ってみて、しっかり前葉体が出たところで再度他の種類も買うって方法ですね。
もちろんたまたま買ったその1種だけがいい状態だっただけということもありますが、慎重をきすなら一気に同じ業者から数種類買うとかはおすすめしません。
胞子がダメだと最初から失敗ですが、蒔くまでわからないのが難しいところです。
なので信頼できる業者を自分で見つけておくのはやっておいて損はないですよ。
ビカクシダ胞子培養に必要な道具
ザル付き100均タッパー
前葉体の管理は100均のタッパーで十分です。
こちらはセリアで買いました。
大きさも15〜20センチ四方ほどあれば、1g程度の胞子でもびっしり一面生やせます。
ザルがついていると湿度管理と取り出してメンテしやすいですが、正直慣れてくれば緊急で取り出したりすることはあんまないので、普通のタッパーでもOKです。
ピートモスorジフィーセブン
胞子をまく苗床には「ピートモス」か、サカタのタネさんの「ジフィーセブン」がおすすめです。
私はどちらでも実験しましたが、どちらも問題なく前葉体を展開してくれました。
ただおそらくジフィーセブンには育苗を促進する肥料が含まれている分、これがビカクシダの前葉体の成長にも良い影響を与えている気がします。
最初の苔のような状態の弱々しい前葉体から、胞子体になるまでのスピードがあきらかに早いんですよね。その分安定した育苗ができます。
ピートをふるいにかけるなど、胞子撒きが手間なく楽なのも嬉しいですね。
私は今後ジフィーで培養していくと思いますが、コスト面で考えるとピートモスの方が安いので、大量に育てるという場合はピートも良いかと思います。
どちらもちゃんと育ちます!
茶こし
これは100均のやつでOKです!
ただ目が粗すぎると胞子が全部素通りしていきますので、いきなりまくのではなく、まずは紙の上で試してくださいね。
消毒用アルコール
胞子を巻く前にすべての道具と手にを消毒しておきます。
これをやっていくと菌やカビの混入を防げるので、前葉体がダメになっちゃうリスクを限りなく減らせます。
カビや菌はほんとうにどこにでもいて、どっからでも湧きますできるだけ発生を防ぐために容易しておきましょう。
胞子を乾燥させておく
この工程もかなり大事です。ビカクシダの胞子は乾燥させることで前葉体がでる確率が高まります。
ネットで売ってる胞子には「乾燥済みです!」というものが結構あるのですが、こういった胞子でもコピー用紙やパラフィン紙、新聞紙など乾いた紙でやさしく包んで数日(3日ほど)置いておくなどして念のため乾燥させておくと前葉体まで育つ確率が高くなりますよ。
ビカクシダ胞子培養実践
道具の用意と下準備ができたらいよいよ撒いていきます。
1,使う道具を消毒する
まずは手や道具を消毒しましょう。
言うまでもないと思いますが、「手」からですね。
手を消毒したあと、タッパーや茶こしなど直接土や胞子が触れる場所は全部消毒しておきます。
2,ジフィーセブンを戻す(ジフィーの場合)
ジフィーセブンは水に浸けることで大きくなります。
5〜10分くらい水につけておくと高さが5倍くらいになりますので、戻ったものを使っていきます。
(もちろんこの際も、接触する道具は全消毒です!)
2,ピートをふるいにかけて苗床を作る(ピートの場合)
ピートの場合は、3段式のふるいを使って、一番細かい目までかけていきます。
残った細かいピートをタッパーのザルにうつして苗床に使います。
5mのふるいにかけたあと、2〜3mmのふるいにかけ残ったものがおすすめです。
厚さ2cmほどの苗床をつくってあげたらその上に直接胞子をパラパラしていきます。
胞子を茶こしでまく
慣れるまでちょっと難しいかもですので、一回紙の上で練習しておくと本番で上手に蒔けます。
ケーキの上に粉砂糖をかける時のような激しくふるいにかける感じではなく、指先で「とんとん」と優しくタッチしてあげるイメージでやるとうまくいきます。
色んな種類の胞子を巻く場合は、一回蒔くごとに洗って、混ざらないようにしておくことをおすすめします。
ピートの場合は肥料を薄めた水をかけて全体を湿らせる
液肥は何でも良いですが、私はハイポネックスをものすごく薄めて与えてます。
コップ一杯に3滴くらいのイメージですね。
ピートの場合は表面が湿っていても、中が湿っていない場合がありますので、気持ち「多いかな?」ってくらいかけちゃいましょう。
水が滴って下のザルに溜まったら一旦捨ててあげればOKです。
あと私はピートをザルに入れる前に、一度バケツに入れて霧吹きで湿らせてからまぜまぜします。
めんどいですが、これをやっておくと表面だけ湿ってて中身はかっさかさの状態を防げます。
細かいピートほど全然水吸わないのでこのひと手間が結構大事です。
ジフィーの場合はタッパーに水を入れて水につけて管理
↑画像のようにザルの底部分にギリ水がつく程度に入れて、ジフィーが常に水と接触している状態を作ります。
これで苗床が乾燥しなくなります。
ちなみにジフィーを熱湯で消毒しつつ戻すやり方も試したのですが、正直やらなくても器具の消毒をしておけばカビはそんなに生えてきません。
熱湯をかけてからまだ冷めてないぬるいジフィーに胞子を蒔くと全く出なかったという経験がありますので、熱湯でやる場合は1時間くらいかけて完全に冷ましてからがおすすめです。
適した培養環境と管理の注意点
前葉体が大きくなったら定期的に水やり
前葉体が苔のような状態からわしゃわしゃしたキャベツみたいな状態になったら、水を定期的にぽたぽたとおとして上げます。
そうすると受精が始まり、成功すると胞子体が出てきます。
霧吹きでもいいですが、受精を促進するため滴るくらい水をあげてください。
ピートの場合あまりあげすぎると表面がびちょびちょになって、アオコが発生しやすくなりました。
なので局所的にスポイトとか使ってあげることをおすすめします。
またこの段階であげる水に肥料を混ぜてもいいです。
私の場合は規定の量をさらに2〜3倍にうすめたハイポネックスの液肥をあげてます。
あまり濃い肥料をあげると、これもまたカビや苔の発生に繋がりますので、慎重に与えていくのがいいでしょう。
管理に適した室温は?
24〜28℃くらいが理想です。
ただ私の経験上3月末頃撒いて、室温15℃くらいでも前葉体は出ましたので、最低でもそのくらいの室温はキープしてあげると良いですね。
私は直射日光の当たらない部屋の隅で育てています。
光は大事だけど直射日光は避ける
他の観葉植物たちと同じように光は喜びますが、直射日光はできるだけ避けましょう。
私は観葉植物用のライトと、熱帯魚飼育時に水草を育てていたアクアリウム用のライトを使っていますが問題なく成長しています。
最初は1日12時間ほど当てていますが、現在は実験的に14時間ほど当てていて、肌感覚的には成長が早くなったように思えます。
絶対に乾燥させてはいけない
乾燥は大敵です。これまでのすべてがパーになりますので、こまめに乾燥してないかチェックしましょう。
以前油断して1ヶ月ほど様子を見てなかったホワイトホークの前葉体がすべてカリカリの焼け野原状態になってたことがあり、膝から崩れ落ちた経験があります。笑
幸いにも生き残っていた部分が少しだけあったので、水を急いでかけたら盛り返して来たのですが、育成期間が長い分ショックも大きいのでご注意くださいね。
水分多すぎない?
逆に水分が多すぎるとドロドロになったり他のコケ類が生えてきてビカクシダを覆い隠してしまいます。
ビカクシダの前葉体の成長を妨げたり、勢力を拡張して虐げてしまいます。
びちょびちょでなく、適度にしっとりした状態が理想です。
まとめ
以上がビカクシダの胞子撒きから、胞子体まで育てる過程になります。
下準備がとても大事になりますので、しっかり消毒した道具を使って、最初は焦らずゆっくりまいてあげてください。慣れてくれば簡単ですよ!
このあとの鉢上げの方法であったり、板付けの工程などもブログで扱ってまいりますので、このあとの工程はそちらの記事を御覧ください。